学習院大学教授の著者による、ゼミ生を読者に想定した本です。1930年代のアジア主義を問いなおすことにより、1990年代後半から徐々に盛り上がりつつある、新たなアジア主義について、その共通点と過去に学ぶべき点について述べられています。
1930年代といえば、軍国主義が台頭し、大陸での陸軍の暴走が始まったという認識でした。しかし実際には、「アメリカの経済的介入を元にした、東亜諸国の政治的経済的独立」を目指した東亜主義が芽吹いていた、とのこと。
1930年代の東亜諸国が自力で帝国主義下の植民地という地位を脱却するのが難しかったため、欧州の帝国主義国ではなく、アメリカに協力を仰ぐべきだ、という意見が当時あったということに驚きました。歴史認識というのは時を経る度にいろんなフィルターがかかってしまうモノだなと思いました。とはいえ、やや親米「過ぎる」かなと感じたので、それを踏まえて読んだほうがいいでしょう。
ここ数年新書ブームのため、とても新書とはいえない薄っぺらい内容の新書も多いのですが、この本は久しぶりに新書らしい新書だと思います。東アジア諸国に興味を持っている人にはお勧めです。
アジア主義を問いなおす
posted with amazlet on 07.02.24
井上 寿一
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賛成できません。1930年代「日中関係」史
「アジア主義」という「親米」