『無国籍』読了

生まれてすぐから、無国籍として育ち、無国籍としてのアイデンティティを持っていた著者による、その生い立ちと無国籍に関する問題についてまとめたエッセイ。

著者の場合は両親が台湾出身で、著者は日本で生まれ、生後直に日本が台湾と国交断絶し、中国と国交を結んだため、両親の意思によって「無国籍」となったそうです。しかし無国籍問題はそれ以外にも外国人と日本人との間に生まれた子供の戸籍の問題など、知られていないけど当人やその家族にとっては非常に大きな問題となっているようです。

日本人の両親のもと、日本で生まれた人には全く想像もつかなかった話です。そして国籍が実はその人のアイデンティティを醸成している部分が大きいという指摘も、確かにそうかもしれないと思いました。好む、好まざるに関わらず、日本国籍を持つことにより、日本人として「見られる」し、日本人として「行動」してしまうから。

それが当たり前だと思うけど、それが当たり前じゃない人も、いるということ。そして国籍は普遍のものではなく、ヒトモノカネがボーダーレスになっている現在、様々な理由で国籍を変えていく、もしくは喪失する人も出てきているという現状。今まで持ち得なかった視点を見せてくれて、非常に面白いエッセイでした。

ちなみに日本人以外の人にとって日本国籍というのは非常に取得が難しい(帰化の条件が厳しい)のですが、その分日本国籍のチカラは偉大で、世界中旅していても、日本国発行のパスポートはVISA無しで入れる国は多いし、VISA必要でも、入国時の審査なども甘めな感じがします。

また、小資源・小資産の島国国家などでは、パスポートを販売したりしています。パスポートを売ることで外資を稼いでいるわけです。まぁ日本のパスポート持っている人にとってはこういうパスポートが本当に「使える」パスポートかどうかはわかりませんが。台湾など、国交を結んでいない国が多くある国の人にとっては便利でしょうね。テレサ・テンがインドネシアのパスポートを持っていたのも、台湾のパスポートでの出入国が面倒だから、という理由だったようだし。

無国籍
無国籍
posted with amazlet on 07.06.12
陳 天璽
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5 まったくもって、素晴らしい
5 「無国籍」を追体験
3 ほんとうにいたターミナルな女性