昨年参加した『香港返還10周年記念シンポジウム』にて頂いた本です。結構ボリュームがあるので読むのに時間が掛かってしまいました。
香港の競争力の源泉について多角的に調査した結果をまとめたもの。IMDの調査等で香港の潜在的競争力が世界1位に選ばれた理由を掘り下げて調査しています。
当然のことながら、香港が単独でその競争力を保っているのではなく、あくまでも後背地である中国華南地域との強い結びつきが、その競争力を担保しています。そこでよく言われるのは「香港のゲートウェイ機能」。これはヒト・モノ・カネ、そして情報が香港を通して華南地域に流れ込み、華南地域から香港を通して世界へ広がっていく、という意味で言われていますが、実は香港の強さはそれだけでは説明しきれず見誤る、というのです。
ではどんな香港はゲートウェイ機能以外にどんな役割を果たしているのか。それを「パッケージャー・オーケストレーター」という言葉で表現しています。オーケストラの指揮者のように、香港が中心となり華南地域へ金融・コンサルティングサービスなどを提供し、華南地域と一体となって経済活動を行っている、という形態を指しているそうです。
確かにゲートウェイ、という言葉からは右から左へヒト・モノ・カネが流れているだけ、のように聞こえますが、実体は香港で高度に発達した金融・不動産業を中心としたコンサルティングサービスが、華南地域のヒト・モノ・カネの流れを指揮していると言った方が、正しい姿だと思います。
上海を中心とした長江デルタとの競争激化で、香港を中心とした珠江デルタ〜華南地域の競争力がこの先10年も安泰かというと、もちろん競争力維持は簡単ではないでしょう。それでも上記の視点から見ると、香港はまだ上海にオーケストレーターとしては一日の長があるため、そう簡単には追い抜かれたりはしないのではないでしょうか。
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