ブランドと偽物

ITmedia D PCUPdate:中国の大地で輝くFlash文化 (1/2)

ちょっと古い記事ですが、中国のFlashの大活躍について書かれています。中国のサイトを見ると、とにかくFlashの嵐。よくもまぁここまでやるわ、と思うくらい。

上記記事の中で、海賊版ソフトについても触れられています。中国では大手を振って、るわけでもないですが(WTO加盟やオリンピックの影響)、まだまだ違法コピーがまかり通っているのが現状です。

最高学府である北京大学や清華大学内でも10元程で教科書を丸ごとコピーし、製本までしてくれる复印店がわんさかありますし、街中のショッピングセンターのCD/DVD屋さんにも10元未満の違法コピーの映画DVDが大量に並んでいたりします。もちろん衣服・宝飾のブランド品のコピーもまだまだ簡単に手に入ります。

家電ではソニーのニセモノが多いそうで。中関村の電脳街でソニー製を買う時はニセモノに注意しろ、と中国人の友達から言われました。どう注意すればいい?と聞いたら、「中国人でも簡単には見抜けないなぁ」、と全然アドバイスになっていない答えが…。

買おうと思っていたデジカメはPanasonicなのでそれを伝えると「松下はほとんどフェイクが出回ってないから大丈夫だろう」とのこと…。ニセモノの量は本家の人気に比例するわけで、ここでもPanasonicの劣勢状況が見て取れます…。Panasonicにとってはニセモノが出ないのは良いことなはずですが、微妙に複雑な心境です…。

最近仲良くしている台湾交通大学からの留学生、Dennyに、クラスで発表する資料向けにブランド品についてのアンケートに答えてよ、と言われて協力しました。自分の友達がブランド品を持っていた場合、それが本物だと思うか、そう思う理由はなぜか、等という内容です。

そもそも日本だと「友達の持ち物がニセモノ?」なんて質問自体愚問なわけで、非常に興味深いアンケートでした。僕はニセモノの確率が高い、なぜなら同じようなデザイン、品質のものが格安で手に入る状況で、なぜ高い金出してブランド品を買うの?という意識の人が多いから、と答えました。

実際最近普通話の家庭教師の子とも持ち物の話になった時、彼女の持っていたD&Gの鞄について、それ本物?と聞いたら「ニセモノに決まってるじゃん」と返ってきました…。まぁそうだよな、という感じ。

中国だけではないでしょうが、大概のブランド品は販売国の平均収入などを考慮した価格設定ではなく、基本的に世界中どこでもほぼ同じ値段で売っています。どこかで安くしたらその値段に合わせて他の国の値段が値崩れしたり、並行輸入が流行って正規販売品が売れなくなる、という理由かと推測されます。

が、そうなると、例えば中国では北京大学学部卒(いわゆるエリート)の新卒月給ですら4,000元程度(60,000円程)だそうで、とても一般市民の手の出る価格ではないわけです。

もちろん中国では貧富の差が激しいのでそんな値段でも買える人はいますし、国内流通費、人件費、その他の固定費は他国に比べて安いため、マージンも他国より多く取れるはず。そのため世界中で同じような価格設定をしていても、中国(等の平均収入の低い国々)では、量が出なくても一品毎の利益率が高くなり、経営的にそれほど困ったことにはならないのでしょう。そのため、このプライシングは変わることがなさそうです。

もちろんこんな状況(コピー天国)がいつまでも続くわけはなく、文化的に成熟してくれば自ずと変わるのだろうと思います。韓国では10年前まではやはりコピー天国だったのですが、最近ではコピー品を持ってると貧乏人だと思われるので持たない、という傾向らしいです。北京人たちも同じような意識になりつつある、という記事を読んだことがあります。

そうなると、今度は中国国内企業で他社のマネっ子している企業がどうでるのか、興味深い訳です。わかりやすい代表格が李宁なわけです。商品の品質自体は外国メーカーと正直変わりません。外国メーカーもMade in Chinaなわけだし、李宁自身外国メーカー向けにOEMも行っているのです。

しかしデザインやブランディングとなると話は別。特にアパレルとなると、ブランドイメージは重要ではないかと。スポーツウェアだと機能性重視、という部分もありますが、それは一部のコアなユーザーであり、大概の人は機能性よりもファッション性を重視して選ぶ傾向があります。

ところでニセモノって、どうやって出回るのでしょうか?以下がいくつかの記事と自分の推測です。

1.デザイン盗用し下請け工場で生産
2.盗品(盗品経路は工場出荷前から、出荷後、店舗倉庫など色々)
3.メーカから生産受託している会社が生産品の一部を横流し(組織・個人レベル共にあり得る)

1についてはかわいいものです。見分けもつきやすい。しかし2の場合は本物、3の場合も受託元のラベルを別のものにしているだけで、実質本物と同じなわけです。これはかなり悪質。

つまり市場に出回っているニセモノの一部は本物と同じ品質ということになります。こんなのが安くて簡単に手に入る環境で、何を好きこのんでブランドショップで正規品を買う人がいるでしょうか。

逆に本物の品質についても実は疑問符が。特にコンピュータ家電系がそうですが、「Made in Japan」と「Made in China」などでは明らかに値段が違います。同じモデルで生産地を分ける例はめったにありませんが、プレミアム価格をつけた品物は日本製になっていて、普及価格帯のものは海外生産になっていることが非常に多いのですが、これって本当に日本製なの?と思うわけです。(もっとも最終組み立てラインの品質が製品の品質に大きく影響する、というのも嘘ではないのですが)

というのも、製品の部品の一部、もしくはほとんどが海外生産のケースが少なくありません。じゃどうして日本製とうたえるのか、というと、最終組み立てを日本でしているから。それって海外で生産しても品質的にそう大差が無いのでは?それでも格差をつけているところに、「Made in Japan」ブランドプレミアムがあるということなのでしょう。

衣服もそうで、「Made in China」より「Made in Hong Kong」の方が質がよさそうに感じる(中国人)消費者は多いのです。そのため衣服の生産は中国国内で行い、最後のタグ付けだけ香港で行い、それをもって香港製とうたっていたりしているものがあるそうです。わかる人にはわかりますが現在香港で製造業はほとんどありませんので、香港製造、というのが眉唾だと見抜けます。が、それは一部の人だけでしょう。

結局、総合的な「ブランド(名前や生産地等)」に左右されず、何が本当に良いものなのか、自身の目で見きわめる能力が必要なのだなぁと思いました。Flashの話からは相当はずれてしまいましたが…。