北京生活の総括 社会編

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これまでのエントリとかぶるところもあるのですが、北京に住んでみて、こちらでの社会一般に対する感想は、ありきたりではありますが来て見て触った甲斐があった、という感じです。

生活をしていて思ったのは、本当に貧富の差が激しいこと。大多数の低所得者層と、一部の高所得者に二分化しており、その格差は広がるばかり。これは訒小平の「富める者から先に富め」という政策を如実に表しているわけですが、いくらなんでも行き過ぎだろう、というくらいに開いています。

別の見方をすると、日本で多数を占めているような、中間所得者層が未熟。日本で格差社会の問題が叫ばれて久しいですが、中国に比べれば格差なんて存在しないに等しいです(だからといって問題解決になっているわけではありませんが)。

僕個人の生活の中でも、一人で過ごす日の食費は1日15元程度(しかも別に貧しさは感じない)ですが、友人と昼夜一緒に食べると150元を超したりします。あらゆるモノ・サービスにおいて、両極端の2層を満たすことが出来るようになっているわけです。これが1つの都市の中に同居しているというのはなんとも奇妙な感じがします。

ショッピングモールなどで家電製品を見ていると、一部の商品(デジカメ等)を除いて、日本製品の存在感は薄いです。その代わり日本では聞いたことがないような中国国内企業の製品と、韓国製品が幅をきかせています。国内企業はとにかく安い商品を提供しており、庶民の味方、という感じ。韓国企業はハイエンド層を狙ったモノが多い感じがします。

ちょいと横道にそれますが、日本では韓国製の製品はあまり見かけません。アメリカでのブランドランキングなどでは既にソニーよりも上位にいるサムソンですら、日本ではほとんど売れていません。これは韓国企業が日本市場に力を入れていないのではなく、国民性に依存するところが大きいようです。つまり日本人は韓国を含むアジア諸国の製品に対してあまり良いイメージを持っていないため、積極的に手をださないようです。もちろん日本企業の製品力が強い、というのもあるのでしょうが。

韓国製品が売れない国は日本ぐらい、という話も聞いたことがあるので、日本人の対アジア感が影響を与えているというのもあながち嘘ではないかと。

話を元に戻しますが、日本製品の存在感が薄いのは、日本製品が元々日本で中間所得層をターゲットにしたものが多い、というところに起因しているのもあるのではと思いました。ほどほどの値段で高品質、というのが日本製品の強みだと思うのですが、「ほどほどの値段」で買える層がほとんどいないわけです。低所得層は値段で買うものを決めますし、高所得層は高くても良いからとにかく良いものを、という購買行動になります。

もう一点、売掛金の回収が中国では非常に難しいと言われていて、日系企業は現金決済する大手流通・小売りにしかモノを卸したがらない、というところがあるようです。そのせいでそもそも日本製品を見かけるのが一部の限られたお店だけになってしまっていると。商文化の違いで根深いのですが、ここをなんとか乗り越えないと、日本製品はいつまでたっても売れない気がします。

食事に関してですが、昼ご飯、夜ご飯が合わせて15元でも十分美味しくてボリュームのある食事が取れます。が、安全性に関して言えば、非常に危険だと思います。というか、150元だしても安全かどうかははっきり言って担保されません。なのでこの際安い方が良いや、と割り切ったわけです(^^;。

偽物の横行はもうどうしようもないというか、そもそも著作権という概念が薄いのと、低所得者層がマスの顧客層である以上、高いモノを買おうとしないというよりそもそも買えないので、仕方がないと思いました。これは著作権という概念を教え込むよりも、中国全体の経済の底上げをして、人民が適切な対価を払えるようにする方が先決ではないでしょうか。

また、国の外から見る中国というのは、北京や上海、それと一部の観光都市のイメージに集約されると思います。しかし内実は大きく異なります。良くも悪くも中国政府のPR、情報管理が上手い証拠なのだと思いますが。

北京市内から出ると、2時間ほどで山の壁面にへばりつくように民家が建っているのを見ることが出来ます。そこに住む人々は放牧等で暮らしているようです。内陸部に行けば行くほど、もっと悲惨な状況です。

北京市内の月の平均賃金が1,500元と言われていますが、この中から数百元を地方の実家に送っている人々も少なくありません。地方では数百元ですら、家族が暮らしていくのに必要なお金なのです。

そのため、労働市場は買い手市場。なにせ安価な労働力は地方からいくらでも出てくるため、雇用者側が賃金を引き上げる理由がないわけです。安月給に不満を漏らして従業員が辞めたとしても、補充はすぐに出来ます。まさに労働者は「歯車」の一つでしかない、わけです。

また雇用問題のせいか、やたらと従業員が多いのも目に付きます。1/3以下の人間で同じ作業量がこなせるはずなのに。人を減らしてその分給料を高くする、というのは難しいのでしょうか。失業という別の問題を引き起こしますけど。人が多くて作業量が少ないと、どうしても従業員のモラルが低下する気がします。「待ち」の時間が増えると、気がゆるみがち、なんですよね。プロ意識に欠ける従業員が多いです。

外資系企業ではそんなことはないのですが。例えばスターバックスでは必要最低限のスタッフしかいませんし、きびきび働いています。仕事の内容がローカルな食堂と大きく違いがあるわけでも無いと思うのですが、プロ意識はしっかりしているように感じます。

国についてもう一点。中国を一つの国としてとらえる見方自体が無茶なのでは、と、こちらに来て思いました。少なくとも華北、華中、華南の3つくらいに分けて、市場に入る際もその3つでとらえた方が確実ではないかと。エリア、省毎に文化も言葉も違うので、それをひとくくりにするのが無理というモノ。普通話の普及率ですら60%以下なわけで。

また中央政府と各省の地方政府との関係性は必ずしも中央政府からの一方的な指示で動くわけではなく、自律分散的に機能している部分も少なくありません。そういう意味ではアメリカの連邦制よりも中央-地方の結びつきは弱く、EUにおけるEU加盟のヨーロッパ諸国よりは強い、という感覚でしょうか。