明日から始まるThe GIFTのプロジェクトに備え、『The Fortune at the Bottom of the Pyramid』という本を読んでいます。
Wharton School Pub
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ビジネスと国際開発
日本語訳も出てました。
英治出版
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必読書!!
潜在的市場の価値
真にクリエイティブな本
我々の常識を捨てることから
この本ではまず世界人口を購買力平価によってざっくり4つの層に分けています。The GIFTのExecutive director、Doctor Tangは3つに分けていましたが、大差はありません。ピラミッド状の絵を描き、頂点はUS$20,000以上の購買力を持つ高所得者層、US$1,500〜US$20,000までが中所得者層、それからUS$1,500前後の層にUS$1,500以下の層。
ここで注目するのは購買力平価がUS$1,500以下の層です。貧困層と読み替えても良いですが、この層に入る人口が全世界で40億人になるそうです。
今まではこの層は貧困故に購買力を持たないと考えられ、製品・サービスの購買客ではないと見なされてきました。また金額には敏感だけどブランドへのこだわりはないと見なされ、大手企業がブランド力を持って市場に入る動機も生み出しませんでした。
が、実はこの層へは中所得者以上の層へのアプローチとは全く違う、革新的な方法を使えば十分に顧客層として見なせるはず、というのがこの本の中核部分です。上記の購買力がない、ブランドへのこだわりはない、等は既存の市場(高・中所得者層)を対象にした戦略による「思い込み」であり、その「思い込み」を打破すれば40億人もいる魅力的な顧客層をつかむことが出来る、としています。
ではどうすればいいのか?この本では成功事例も載せていますがまだそこまで読み進んでいないので(^^;、ここではBOP(Bottom Of Pyramid)へアプローチするための12の原則をご紹介しておきます。
1. 製品・サービスの性能対価格比に集中する。安ければ良い、というものではない。
2. イノベーションはハイブリッドな解決方法を必要とする。BOPマーケットの持つ問題は古い技術でなんとかなるものではないので、様々な最新技術、先進技術を組み合わせる必要がある。
3. BOPは巨大な市場なので、解決方法はスケーラブルで国、文化、言語の壁を乗り越えやすいものにすべき。
4. 開発先進国市場は資源の無駄になれているが、BOPでは資源の無駄を極力省くようにする。
5. 製品開発は形のみならず、機能性について徹底的に理解することから始める。開発先進国と開発途上国では生活環境などが違うということを認識しなければならない。
6. プロセスイノベーションは製品イノベーションと同様にBOPマーケットでは重要。生産した製品を顧客までどう届けるか、どう売るか、アフタサービスをどうするか、等も含めて検討が必要。
7. 高いスキルを不要とすることが必要。BOPマーケットの人々は基本的に高等教育を受ける機会を得ていないか、識字率が低いので、そういう人でも難なく扱えるようにする必要がある。
8. 製品を使うにあたり、顧客を教育することが重要。ほとんどのBOPマーケットの人々はマスコミ等に接する機会が無く、開発先進国で行われるような情報伝達方法(広告など)を用いても上手くいかない。
9. 製品は劣悪な環境でも動くように作る必要がある。
10. インターフェースの調査も重要。様々な言語、文化、スキルの違いを超えて利用出来るように設計する必要がある。
11. イノベーションは顧客に届く必要がある。低いコストで貧困層にも届けられるような配送方法を生み出さなければならない。
12. 逆説的だがBOPマーケットにて特徴や機能の革新は非常に早く行われる。
これまでの常識、思い込み、先入観を取り除いて、全く新しいアプローチを用いれば、今まで無視していた巨大なマーケットセグメントを顧客層に変えることが出来る、というわけです。この概念は90年代には既に提唱されていたそうですが、それを実践し成功している例が現れ始めてようやく大企業やNPO、地方政府などが注目しだしたようです。
実際インドではLGやサムソンがBOPマーケットへの参入に成功しています。目から鱗、な概念です。
The GIFTの今回のプロジェクトはインドの起業家によるBOPマーケット向けの製品・サービスについて、今後も持続的な成長をしていくにはどうしたらいいか、という経営課題についてビジネスプランを練り、投資家の前でそのプランを発表して追加の投資をお願いする、というもの。簡単ではないですが、非常に魅力的で、良い勉強になりそうです。
yutakarlson
■低価格ミニノートの爆発的なヒットを受けて、ついにメーカーが普及に本腰へ−ネットブックは大社会変革と未曾有の経済発展の一翼を担うかもしれない
こんにちは。低価格ミニノート、かなり売れていますね。このミニノートの普及により、全世界の半分以上の人がパソコンを持つことになれば、世界に大変革が起こると思います。ここ数年間、私たちは、金融・経済というキーワードに踊らされ続けてきました。そのなれの果てが今回の金融危機です。金融危機後、ビッグスリーやトヨタ、ソニー、キャノンなどの世界の名だたる企業が苦戦しています。車が売れない、モノが売れないと嘆く人が多いです。私はネットブックによるパソコンの普及により、いままでほとんど知られていなかった貧困層の人々からの情報を受け取る機会が飛躍的に向上することから、社会は大変革することが考えられます。ただし、貧困層の人々に対するビジネスと今までの輸出産業のビジネスとは、根本的にモデルが違うと思います。同じことをしていれば、同じことの繰り返しになります。詳細は是非私のブログをご覧になってください。