トヨタ礼賛本は山ほどありますが、日本ではなかなかトヨタ批判の本や記事というのは出てこないのが実情。これは例外的な本です。
トヨタが表に出そうとしない、社内の労務管理や下請けとの問題、リコール台数の秘密などに触れています。批判のための批判、という感じも若干ありますが、全体としては「健全な批判がトヨタを良くし、ひいては消費者にもメリットになる」という視点で書かれています。
ビジネススクールでもサプライチェーンでトヨタの話は出ますが、とうぜんカンバン方式やアンドン等、効率的な生産管理とJITに焦点を絞った部分だけ。
一般的にはトヨタ単体が儲かっていることばかりに注目されがちですが、実際にはトヨタを中心としたエコシステム全体で本当にそれが適切な儲けなのかを考える必要があるのでは、と思います。具体的にはトヨタ系列であるデンソー等グループ会社のみならず、トヨタからの受注に依存しているあらゆる下請けメーカを含めた上で、みんなが本当に適切な利潤を得ているのか。こういう視点の文献はほとんど見たことがありません。
それだけではなく、そこで働く人々も本当に適切な労務管理がなされているのか、というのも重要な点です。トヨタの正社員のみならず、トヨタに関わる全ての会社の正社員・非正社員を含めて、本当に適切な労務管理がなされているのか、日々無理・無茶をしていないか。
あれだけの利益を出すためには社員がある程度犠牲になるのは当たり前、という見方もあるでしょうが、日本の製造業を代表する大企業として、そういう「倫理観」で本当に良いのか、など、実は疑問がつきないのがトヨタという会社です。
渡邉 正裕 林 克明
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