2009年3月23日17時14分(香港時間)をもって、僕のMBA留学生活が終了しました。
その後就職や日本での私生活上の問題などあって、総括する間も無く4ヶ月ほど過ぎてしまいました。改めて総括してみたいと思います。
[Pre-MBA]
MBAを考え始めたのは大学4年になってDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューを読み出し、Harverd Business Schoolにあこがれたから、です。いたってミーハーな理由。
元々人の下で働くのが苦手で、だったらトップマネジメントを目指さなければ、と思い、そのためのステップとしてMBA留学は重要だろうと考えていました。
大学を卒業した時の予定では、5年勤めてから私費留学、としていましたが、職場の中で思うような経験を積むことが出来ず、ずるずると、一時は夢をあきらめそうになりながらも、9年4ヶ月勤めた後、私費で香港科技大学に留学したわけです。
香港科技大学を選んだ大きな理由は以下3つ。
1. 差別化
MBAの本場はアメリカだし、欧米にMBA留学する人が大半。しかし卒業後は「MBA」というくくりでの競争になり、○○スクールを出ている、程度では差別化は難しい。徹底した差別化のためには欧米のMBAとは違う土俵に立つべき。
2. トップスクール
香港科技大学はアジアでトップスクール。キャンパスビジットした際にもそのクオリティの高さは十分にわかったので、ここしかないと思った。
3. 香港に住んでみたかった
香港迷としては一度住んでみたかった。また欧米での食生活には耐えられないと思ったのも重要なポイント。食事は日々のことなので、簡単には譲れない。
[MBAのアカデミック面]
正直僕にとっては勉強についていくのは非常に大変でした。日本にいる時は、人より時間をかけて努力してようやく人並み程度、といった風情だったのに、ここではスケジュールが非常にタイト!睡眠時間を削りに削っても全然足りなくて、何度も挫折感を味わいました。
クラスへの貢献度も低いと自分では思っています。それでも、来たことを後悔はしていません。この経験で得たものはアカデミックなもの、知識的なものだけではなく、それ以上に、つらい状況にも逃げ出さずに向き合ったこと、異なる文化・思考を持った多彩なクラスメートや教授陣とどうやって議論を進めていくか、つきあっていくか、というコミュニケーションスキルに磨きをかけることが出来ました。
また僕にとっては幸いなことにクラスメート75名中日本人は僕だけ。いやでも日本語無しの生活にならざるを得ず、友達に頼るにしても全て英語。英語で物怖じせず話すコトが出来るようになったのは大きな収穫です。
授業の質に関しては、教授による、とだけ言っておきます。これはどこの大学でも同じでしょう。セメスターの終わりには毎回教授に対するフィードバック評価を行うため、これを元に翌セメスター以降教授が替わったりします。こういうシステムもきっとどの大学でもあるのでしょうけど。
授業のコンテンツについて、金融系が強いのは言うまでもないのですが、中国ビジネス関連も充実しています。元ウォルマート中国のCEOやペプシアジアのCEOが教授として授業を持っていたりするため、彼らの貴重な経験を元にした授業を受けることが出来ます。
授業以外でもMBA Office主催で香港を中心としたアジア圏のトップ経営者達を招いた講演会を頻繁に開いています。平日夜間中環のサテライトキャンパスで行われることも多く、卒業生も参加することが出来ます。
[MBAのプライベート面]
非母国語を扱いながら、どこまで仲良くなれるのか、半信半疑ではあったのですが、言葉はある程度しゃべれるなら問題なかったです。社会人になった後、心底信頼して心を許せる友人、というのは作るのが難しい、というのが一般的。それでも僕の場合はMakeITのような勉強会の活動を通じて多少は出来ました。しかしMBA留学中にはさらに年の差を超えて、本当にたくさんの仲良しが出来ました。
またそういうつきあいの中から、国を超えても存在する普遍的な価値観と、バックグラウンドによって大きく違う価値観がどういうものか、ということも学べました。
[生活面]
香港は英語がある程度出来れば広東語は全く出来なくても問題なく生活出来ます。そのため広東語に関しては単語レベルで多少わかる程度しか上達しませんでした。ちょっと残念ではあります。
学内の寮に住んでいて、学内にはスーパーも運動施設も充実しているため、良くも悪くも学内で全てが完結してしまいます。そのため最初のセメスター中は外に出る余裕もなく、日々美しい清水湾を眺めながら、クラスメートと「まだ香港に来た実感がしない…」と言い合っていました。
生活のクオリティは、寮の狭さは別として、日本とほぼ変わらないレベルを維持できます。但し学食に関して、食の好みが強い場合毎日は耐えられない、という人は多いです。中国人、香港人は大抵大丈夫ですが(僕も大丈夫でした)。
[留学生活]
ここでいう留学生活は、北京大学での生活を意味します。香港科技大学MBAプログラムの長所の一つとして、2年目の秋セメスターは世界中のトップスクールへ交換留学に出ることが出来ることが挙げられます。アジア圏のクラスメートは欧米に、欧米からのクラスメートは中国へ行く傾向が強いですが、僕の代ではアジア圏から3人、北京に留学しました。
いずれも中国の文化やビジネス、言語に興味があり、そこを極めたいというのがその目的。何度かblogでも書いていますが中国のMBAのレベルはまだまだ発展途上。ですのでMBAの質を求めるのなら中国への留学はオススメしていません。しかし普通話を上達させたい、中国人の中にネットワークを広げたい、という方には非常にオススメします。
僕自身、4ヶ月に満たない短い期間ではありましたが、そこで知り合った中国人、台湾人、韓国人等の友達とは今でもFacebookやMSNで連絡を取り合ってます。非常に大きな財産です。
[就職について]
短期的に見たら僕の就職は必ずしも僕の望みを全て満たしているわけではありません。特に金銭面。金額的には日本で就職した方が確実に大きい金額を貰えたとは思います。但し生活水準の違いなどで、こちらでの可処分所得は少なくないので、それはちょっと救いです。
元々エンジニア畑からコンサル・マーケティング方面への転職を考えてのMBA留学だったのですが、これは非常に難しいということを実感しました。これは『ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場』でも書かれていて、HBSでもキャリアチェンジというのは大変なようです。うちの大学でも、全く同様の考えで留学してきた様々な国出身のクラスメート達も一様に大変で、ほぼみんな自分の過去のキャリアを活かした就職をせざるを得なかった、というのが実情です。
但し金融系に関しては若干違い、全く違う業界から金融系へ転職したクラスメートは結構います。ですのでうちの大学の強み、Financeを上手く活かすことは可能と言えるでしょう。
[香港科技大学について]
僕の代、Class of 2009は75名、21カ国からの学生で成り立っています。皆ユニークで個性的で、愛すべきクラスメート。国籍別でのマジョリティは中国人で、次が香港人。ほぼ同数のアメリカ人とインド人がおり、香港の大学でありながら香港人はマジョリティではありません。そういう意味では非常にインターナショナルな環境です。
しかし、何度かblogでも書いていますが、7割近くがアジア系というのもまた事実です。つまり欧米から来ている学生達も華僑の子であり、英語と中国系言語1つ以上がネイティブなのです。華僑のためのMBA、という印象を受けてしまうかもしれません。
個人的な推測ですが、これはMBA Officeが意図しているものではないと思います。世界各国でまだ香港科技大学の名前が知られていないため、アジアにルーツを持つアプリカントだけに知られている、というのが実情なんだと思います。この状況はランキングのおかげで知名度が上がり、今後変わってくるかと思います。
香港とはいえ、西貢にほど近い自然豊かな場所に立地しており、大学そのものも1991年に開校した新しいキャンパスで学ぶことが出来ます。勉強するには本当に集中できて良い場所です。
僕らの代までは7割近くが同じ寮に住んでいたため、クラスメート同士の仲が非常に良いのも特徴「でした」。過去形なのは、1つ下の学年で90数名、今年入学で120名を超える学生がおり、少人数で濃い人間関係、というのは難しくなりつつあるからです。それでもアメリカの大学に比べればまだまだ小規模ですが。
また他の大学と比べてMBA Officeのスタッフと学生が仲が良いのも特徴的かもしれません。人によってはなれ合い、プロフェッショナリズムが欠けている、と思う人もいるかもしれません。