『フェイスブック 若き天才の野望 』読了

以前読んだ『The Accidental Billionaires』がFacebook創業者Mark Zuckerbergへのインタビューが一切なされず、彼と袂を分かった人達からの話で作り上げられた外伝だとすれば、こちらはまさに正伝。Markのみならず、Facebook社が全面協力をして必要なだけインタビューをした上で書かれた本です。

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
デビッド・カークパトリック
日経BP社
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これを読むとMarkが何を目指してFacebookを作り上げてきたのか、そしてFacebookがどこを目指すのかがよくわかります。

まさに僕自身の生活がそうなっていますが、Facebookはリアルな世界のソーシャルネットワークをデジタルな世界で補完しています。元々アメリカの大学のFacebookと呼ばれる新入生アルバム(印刷して配布される)のオンライン版、をイメージして作られており、リアルなソーシャルネットワークを補完し、補強する、というところがFacebookの、他のSNSとの大きな違いでしょう。

であるがゆえに徹底的に実名主義を貫いています。もちろん、ネットの世界は虚構を作りやすく、だからこそ実世界から離れて虚構の世界を楽しみたい、という人がいるのはわかります。また実名を出すことによるプライバシー侵害の弊害があることも、Markだってわかっています。

それでも実名主義を押し通して透明性を確保し、ネットの世界でも責任有る言動を取ることを求めることで、Facebookがソーシャルグラフをよりよくしていく、そうMarkは信じているようです。

アメリカだから実名主義が成功したんだ、なんて言う人もいますが、Facebookが力を伸ばすまではアメリカだってみんな仮名で虚構の世界を楽しんでいたのは事実。Myspace等みればわかります。大学生達がソーシャルグラフを強めていくことによるメリットを理解し、それをのちに大学生以外に広げた結果、徐々に実名主義によるメリットが受け入れられてきた、というのが実際だと思います。

また面白いのがNapstar創業者のSean ParkerがMarkに共鳴し、彼のそれまでの経験を元に、VC等から資金調達する際Markが創業者として会社をコントロールし続けられるよう、色々入れ知恵していることがわかりました。

そのため資金調達時のVC選びでFacebookに短期利益を求めないFirmを選んだり、調達後もMarkが取締役を支配できるように手の込んだことをしています。このため「利益追求よりもFacebookを進化させ続ける」ことが可能になっています。

Facebookを受け入れるにせよ拒否するにせよ、その根底にある考えを理解するには、この本は好著だと思います。