知る人ぞ知る、任天堂で大ヒットを飛ばし続けたアイディアマン、横井軍平について書かれた本です。
僕も名前だけは知っていましたが、ゲーム&ウォッチからゲームボーイまで、様々な大ヒットゲームを生み出したとは知りませんでした。
しかし彼が任天堂に残したのは大ヒットとその利益だけではありませんでした。むしろそれを今後も生み出す哲学、「枯れた技術の水平思考」というものでした。
最新技術を使った玩具(ゲーム機含む)を使っても、やがて似たようなモノやさらに最新の技術を使った玩具が出てきて技術競争に陥ってしまい、廃れてしまう。玩具はそもそも最新技術によって楽しみを得られるわけではないし、そういう技術は得てして高いので高コスト。だったら使い古された枯れた技術を使って、いかに創造的な遊びを提供出来るかが重要、という思想です。
これは任天堂でいうと、Nintendo64、ゲームキューブ等は他社の動きに合わせて技術競争戦に陥って失敗した例ですが、DSやWiiがまさに上記思想に乗っ取った製品。DSもWiiも最先端の技術を組み合わせたモノではないですが、人とのインターフェース(タッチパネルやWiiリモコン)を工夫することでゲームによる遊びを再定義しています。
この本の著者、牧野さんは、この思想は任天堂だけに留まらず、今の日本企業も見習うべきではないか、という意図を持ってこの本を描いているようです。携帯電話のガラパゴス化の様に、最先端の技術を詰め込んでも、結局受け入れられるのは一部のユーザーであり、世界に持って行ったら誰も見向きもしなかった、というのは良くある話。そこが日本企業の強みでもあったわけですが、そろそろ方向性を変えないとまずいのでは、と、牧野さんは考えているようです。
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