元新聞記者の福島香織さんによる、中国の第二代農民工たちのルポ。
60-70年代生まれ、文革以降世代を第一代とし、都市部の工場へ出稼ぎに行き主に家族への仕送りのために必死に働いた世代であると定義するならば、第二代はその子供達、80年后、90年后が中心。彼等は生まれたときから物質的に豊になっていて、携帯電話やPC、インターネットを日常的に使います。その反面自己実現欲が強く、消費性向大で、仕送りのために働くというよりは自分たちの欲しいものを買うために働いています。また精神面が弱いのも特徴。
農民工の大半は農村戸籍です。日本で戸籍というと形式的なものであまりそれ自体の重要性というのは考えませんが、中国では戸籍制度が中国における士農工商、アパルトヘイトであり、海外ビザのようなもの。元々は都市の限られた資源を消費し尽くされないよう、農村の人間が都市部に流入出来ないよう制限するために設けた制度であり、今なおそれは残っています。
そのため農村戸籍を持つ農民工は一生都市部の工場で働いても都市戸籍を得ることは出来ません。また農村出身でとても優秀な子供が仮にトップ校、例えば北京大学や清華大学に入れたとしても、学生時代は特殊な居留証が発行されて北京市内に居住可能ですが、卒業後仕事が見つからない場合、一定期間以上は滞在不可となり、そういう人達が『蟻族』になったりしているのが現在の中国の現状。
本の題名は、中国の工場での待遇の悪さから女工哀史的な話を書いているのではなく、この農村戸籍の若者たちがどれだけ働こうとも頑張ろうとも、農村戸籍のママ、都市戸籍の人間達のようにはなれない、という意味で「絶望」としているそうです。
中国を市場と捉えてものを売っていくとなると、テレビや雑誌等で出てくるような中国人ではなく、この第二代農民工たちが消費の主役になりつつある、ということを考えると、本書は非常に有益な情報を与えてくれます。
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