在中国14年の谷崎さんの著書。中国や韓国の企業にヘッドハントされている日本人の方々へのインタビューを元に書かれた本です。
一説には中国だけでも2,000-5,000人程の日本人技術者が、中国企業で働いているとか。ものすごい数ですが、著書の中の推定ロジックからするとあながち大きく外れてもいなさそうです。
谷崎さんは日本の製造業の持つ強みを奪われるという危機感を持って書かれていますが、技術者の方々の話を聞きながら、個人のキャリアとしてこういう道も否定は出来ないとしています。確かにその通りで、日本にいても飼い殺し、もしくは現場から外されて管理職になってしまった根っからの技術者の方々の思いや技術を、日本の中に置いておくのは難しいのが実情。国として、もしくは日本企業として不利益を被る結果になったとしても、個人が生きていく上でそれがより良い方法であるなら、中国に渡るというのもやむなしなのではないかなと思いました。
ただ、中国企業は結果重視なところもあり、基礎研究に力を入れておらず、また日本の製造業の本当の強みは基礎研究から生産技術までのトータルパッケージであり、その点をまだ中国企業は理解出来ていないため、日本の製造業に追いつくには数十年単位の時間が必要だろう、という本書中のインタビュー記事にも完全に同意。その良い証拠の1つが、新幹線。新幹線の強みは車体やレールだけではなく、運用技術も含めた全て。中国はそこを軽視したため、運用で回避出来たであろう前代未聞の衝突事故を起こしているわけです。
もう一つ疑問に思うのは、技術の盗用。技術移転当初はどの国においても同じような過程は辿っていますが、今の中国も他国の製品のパクリが多いです。これはあくまでも先駆者、パイオニアがいて成り立つ戦術であって、自分達が二番手では無く一番手にたったときどうするのか、非常に興味があります。それとも常に二番手でいいと思っているのか...。