今日という日は香港政治史に残る暗黒の1日となりそうです。
香港本土派の梁天琦(エドワード・リョン、2016年1月に香港立法會新界東地方選區補選に立候補、落選したものの得票数は第3位)が、来月行われる立法會(香港における国会)への立候補を彼の選挙区の選舉主任である何麗から取り消されました。
僕自身は香港本土派及び梁天琦の主張する、香港独立を支持するものではありません。香港は返還前後通じて独自の軍隊を持ったこともなく、人民解放軍が駐在している中で中国からの独立というのは不可能。また民族自決という視点からも、元々香港に住む人達の多くは中国からの移民であり、理屈が通らない。香港独立は思想実験としてはありえても、現実的な解ではないと思っています。個人的にはこれ以上中国寄りにならず、現状維持して欲しいところ。
そういう僕でも、今日の選舉主任による梁天琦の一方的な立候補取消は受け入れられないです。まず彼は上記の通り1月の補欠選挙に立候補出来ていました。また今回の選挙では、選挙管理委員会により、これまでなかった『香港基本法を順法する』という誓約書に署名しないと立候補を認めないという、思想・表現の自由に制限を掛けるような手法をスクリーニングに用いる暴挙に出ていました。梁天琦はこれも最終的には署名し、提出しています。つまり要件は満たしている訳です。
それにもかかわらず、選舉主任は梁天琦宛に12ページの文書により立候補取消を伝えています。その文書では彼の個人のFacebookページに投稿された彼の主張、また7月15日付の各種メディアのインタビュー記事に掲載された彼の香港独立支持という意思表明を引用し、「梁天琦は香港独立という考えを捨てていないから立候補は認められない」と結論づけています。
これを人治国家と言わずしてなんと言えば良いのか。香港基本法含め、香港はこれまで法治国家(国として認めるかは別として)として運営されてきました。しかし今回の取消騒動は、それこそ順法の上の取消とは思えません。日本でも改憲派だからという理由で立候補が取り消されるようなことはありません。これが思想・表現の自由というものです。香港基本法ではそれを保証していた(以下2つのリンク参照)にもかかわらず、守られなくなった。それが今日という日です。
梁天琦は本件を司法に訴えるとしています。司法が立法會からの独立を守り、正しい法的判断を下せるのか、今後も注目していきます。