『中国 消し去られた記録:北京特派員が見た大国の闇』読了

時事通信社で北京特派員をしていた著者による、自身の書いた記事を含めた中国の内情を纏めた本です。

多くのページが政治的に迫害された人々へのインタビュー、調査を元にしています。それだけ習近平時代はそれ以前と比較して政治的な引き締め、特に民主派迫害や少数民族迫害が激しくなってきたことの現れだと思います。

民主派、人権派とレッテルを貼られた人々、そして弁護士も適切な司法手続きを踏まずに逮捕・拘留をし、拷問によって口封じをする。21世紀の今でもそのようなことをしている国が日本のすぐ隣にあるのが怖いです。

やり方は違うとはいえ、香港の民主化運動が徹底的に潰された背景には大陸への波及効果を妨げたいからでしょう。そして近い将来香港でも今の大陸で行われているのと同様のやり口で政治犯扱いで反政府的な思想を持つ人々を弾圧するであろう事は想像に難くないです。

「普通に生活していればなにも問題無い」というのは正しくなく。本書の中でも、刑事・民事どちらにおいても法律で適切に処理されなかったために北京まで陳情している地方の「普通の人々」が迫害され、収監されている事も書かれています。陳情者達は普通の生活の中で起こった不幸な出来事に不服を申し立てたばかりにそのような扱いをされており、「普通の生活」者達が平穏無事とは限らないわけです。

習近平時代が続く限り、この闇は広がる一方でしょう。

中国 消し去られた記録:北京特派員が見た大国の闇
城山 英巳
白水社 (2016-05-07)
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