『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』読了

AVは全く観ないのに(演技だし、どれみても同じにしかみえないから)、AV女優の内面には興味のあるわたくし。最近もAV女優の書いた著書を何冊か読んでます。

『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』読了

『キカタン日記 無名の大部屋女優からAV女王に駆け上った内気な女の子のリアルストーリー』読了

普通の女の子が、他にも仕事なら色々ある中なぜAV女優を選んだのか、というのが謎で、興味を持ってしまうのです。

本書は著者自身もAV女優経験があり、業界の内側をのぞき込みながら、単なるインタビューではなく、大学、大学院の論文として書いたモノをベースにしています。そのため前半は2000年代までに出ていたAV女優や性風俗業につく女性達についての社会学的見地の論点をなぞりつつ、そこで見えてこない部分を著者なりにまとめ上げています。

卒論等がベースになっていることもあり、著者がAV女優自身であることは本書では書かれておらず、あくまでも業界に立ち会う形で書かれているのがちょっと偽善っぽい感じも受けますが、それは良いとして。本書もエッセイ同様、一文が長い!彼女の文体なんですねこれ。読みにくかった...。

それはともかく。AV女優になる動機について書かれた章で、実のところ最初の入り口(AV女優になるきっかけ)はさしたる動機ではないものの、インタビューを通じて語る内容を獲得・内面化していくという部分に妙に納得。なんだか海外に好き好んで住んでいる人達も似たような所があるなぁ、と思って。

僕も香港に住んで10年、その直接のきっかけ自体はMBA留学であるものの、それ以前より香港へ執着し始めたのは唯一絶対の動機があるわけでもなく。例えば小学校の頃ジャッキー映画(及び一連の香港映画)を楽しんだから、というのも理由の一部ではあるモノの、同じ経験をした人は同世代で何百万人もいるわけで、その人達と実際に移住した自分の違いは自分でも分からず。「なんで香港が好きなのか、移住したのか?」と聞かれる度にあれこれきっかけを話ながら、それが内面化していったという部分はあるなぁと思ってます。

「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか
鈴木 涼美
青土社
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