先日読んだ朝日新聞のゴーン本の信憑性を大きく覆すような書き出しで始まる本書。かなりフェアな形で検察・ゴーン氏の公表している情報を分析しているように見えます。若干ゴーン氏より(というか著者が反検察なのでしょう)ですが。
冒頭、朝日新聞の独占スクープとしてその他のメディアでも多用された、ゴーン逮捕劇の写真・映像。プライベートジェットのタラップを上がっていく東京地検特捜部の係官と思わしき男性達の写真。彼等がプライベートジェット内でゴーン氏に任意同行を求めたようなショッキングな絵になっているわけですが、本書のゴーン氏へのインタビューでそれは否定されてます。
読んでてえー?と思いました。ゴーン氏曰く、入管でパスポートを提示した際、別室送りになってそこで東京地検特捜部の検事達が待ちうけていて、任意同行を求められたと。じゃああの絵、映像はなんだったのか。あえてショッキングな絵を出してゴーン氏逮捕を劇的に盛り上げる効果をだしたかったのでしょうか。そうだとしたら大成功です。
著者は元検事ということもあり、また過去その古巣と対決してきたこともあり、検察が発表する言葉から、内情を推し量って筆を進めています。そして本件がもともと無理筋なうえ、ゴーン氏の対応が検察の想定外であったため、さらに無理な手を打ったため、ゴーン氏が国外逃亡した、と捉えています。
現在の検察への批判が著者の基本的な姿勢であるので、その点は考慮に入れて読んだ方がいいですが、本件の本質について色々考えさせられました。