『パソコン創世記』読了

青空文庫で読める本書。初版は1985年発刊で、それをエクスパンダブルにした最終版が1994年発刊。

ということは初版が37年前、最終版でも28年前の話で、パーソナルコンピュータ業界の話としては大昔。Windows/Macどころか、MS-DOSの歴史すら語られている本書の読みどころは大きく2つ。パーソナルコンピュータ業界において、日本人がどれだけ貢献していたか、という点と、日本電気(NEC)が日本でこの業界の覇者になった歴史を克明に描いていること。

今もインテルの稼ぎ頭であるCPU。初代のマイクロプロセッサを作った一人が日本人だという事実は、IT業界の人ですら知らない人が多いかも知れません。当時日本のビジコン社に在籍し、インテルに電卓用の汎用コンピュータとして4004をインテルと共同開発、その後インテル移籍し、さらにザイログ社を立ち上げてZ80というベストセラー8bit CPUを作ったのが嶋正利氏。その辺りのことも、触れられています。

もう一人、西和彦氏も忘れちゃいけない。ただ彼はすでに十分に有名ですが、彼のアスキー/マイクロソフト時代の活躍はもっとポジティブに伝えられても良いと思ってます。

そしてNECの歴史。社内競争的に、傍流からマイクロプロセッサを売り始め、トレンドを掴んだ後は主流派が出てきてより高度なパソコンを出していく...非常に興味深く読みました。日本が世界のパーソナルコンピュータ業界のトップランナーに肉薄していた、という事実は興味深く、また今そうで無いという状況が悔しい思いもあります。

IT業界で働く人向けの良い教科書だと思います。